シンプルだからこそ驚きが大きいこともある。
複雑な仕掛けで摩訶不思議な現象を引き起こすマジックも良いが、用意した道具を一切包み隠さず、一瞬のうちに巻き起こす現象で観客の度肝を抜くのも面白い。
今回ご紹介するテンヨーマジック「魔のロープ」は、そんなマジックがないかと考えた時に導き出される、ひとつの回答例と言える。
単純故に大きな衝撃を与え、応用の範囲も実に幅広いこのマジック「魔のロープ」の魅力の一端をご紹介しよう。※仕掛けやタネの説明はありません。
そもそもどんなマジック!? 「現象」編
使用するのは「赤・青・黄色3本のロープ」、この3本のロープそれぞれの両端を結び、「独立したロープの輪」を作る。
3つの独立した輪を観客にしっかりと確認してもらい、ちょいとおまじないをかけると、なんと「3つの独立した輪がチェーンのように連結」する。
これが「魔のロープ」が引き起こす基本現象だ。
実はマジックでは実際に観客が観ているもの以外のところでギミックを操作したり、調整したりということが多い。
所謂"ミスディレクション"がマジックの基本だ。
しかしながらこの「魔のロープ」では、観る者が誰しも注視しているロープ自体で現象を引き起こす。
これがシンプル故に大きな衝撃を呼ぶ一因となっている。
大体マジシャンがポケットに手を入れて何かを取り出したら、『他にも何か取ったな』と誰しも思う。
まあ実際のマジックではそういった場面では本当に取り出したものしか取っておらず、別の瞬間にこっそり用意して、観客に『あれっ!? ポケットから出せる大きさじゃないぞ!!』と二重に驚かせるのがテクニックだが、どちらにしても観客に疑問の余地を与えてしまう行為に他ならない。
「魔のロープ」ではそういった観客が「疑問を抱く」前に現象を引き起こす。
不意を突かれた現象に対する驚きは想像に難くないだろう。
あくまでシンプル、しかし大きな衝撃、驚きを得られることがこのマジックの最大の魅力だと私は感じている。
利用方法は無限大!? 「応用」編
この「魔のロープ」、応用の範囲が実に幅広い。
応用するためにはそれ相応の練習と話術も必要となってくるが、ひとつのギミックでいくつもの不思議な現象を引き起こせるのは強みであり、持っておいて損のない引き出しだ。
以下に私が実際に演じた応用マジックをひとつご紹介しよう。
【切れ目のないものと連結】
"ミスディレクション"を利用した簡単な応用方法。
観客にロープの両端を結んでもらう。
結び目に注視している間にギミックを利用して切れ目のないものを連結してしまう。
結び終わった頃に結び手と観客が気づくように連結したものを見せて一言。
「あれっ!? なんか余計なもの結んでますよ」
結び手も観客も『あれっ!?』となるので、また一言。
「邪魔なんで一回ほどきましょう」
そしてほどき終わる前に今度は連結を外して一言。
「あれっ!? 外れてましたわ」
『え~~!?』
といった要領。
連結するものを観客の所有物にするとより不思議な印象が増すので挑戦してみると面白い。
一通り演じた後、同じ色で作った普通のロープにすり替え、テクニックで魅せるロープマジックに移行すれば、観客が「魔のロープ」の仕掛けを知ることは不可能だ。
仕掛けは簡単!? 注意して演技すべし!! 「注意点」編
この「魔のロープ」、仕掛けは実に簡単な為、ちょっとしたミスで仕掛けがバレてしまう可能性がある。
しっかりフォローしながら演じれば絶対にバレないのだが、バレ易さという意味では高いと言わざるを得ない。
そういった意味では初心者にとって少し難しい部類のマジックかもしれない。
具体的に仕掛けがバレてしまう可能性として大きく以下の2点が考えられる。
1.単純に演者の練習不足によるミス
2.観客の悪ふざけ(無理やり引っ張るなど)
なので実演前にはしっかりと練習し、「応用」編で説明した演技など観客に実際にロープを触らせる場合はしっかりと人を選ぶことを勧める。
最後に
ある程度繰り返し練習することが必要になるマジックではあるが、それに見合った驚きを観客に与えられることは保証出来る。
いくつかマジックを覚えてきて、多少人数の多い会場やステージで演じるには「チャイナリング」同様、とてもいいマジックだ。
私自身「魔のロープ」の仕掛けに不安がない訳ではないので、他のロープマジックと併用することが必然となっている。
数あるロープマジックの中で、ポイントとして仕掛けのあるマジックを取り入れることで、その後の演技の現象も不思議さが増し、観客にとって『???』状態のマジックに仕上げることが出来るだろう。
シンプルだからこそ衝撃的なマジック「魔のロープ」。
あなたのマジックレパートリーにも、是非加えてみてはどうだろうか。